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でも英真は違っていた。
「大丈夫じゃないよ。だって、すごく寒いもん。雪が降るかもしれないんだよ」
そう言うと、英真は左手の手袋を取り、陽菜に差し出す。
「はい、私の手袋片方貸してあげる」
受け取れないと陽菜は拒否したが、英真はお構いなしだ。
陽菜は左手、英真は右手。左右片方ずつのお揃いの手袋になった。
「英真ちゃんの手が冷たくなっちゃうよ」
何だか申し訳なくて、陽菜は手袋を返そうとする。
だが、英真は全く気にしていないようだ。それどころか、楽しそうにしている。
「大丈夫大丈夫。ほら、手袋してない方の手を貸して」
言われた通りに陽菜が手を出すと、英真はその手を取って自分のコートのポケットに手を入れた。
手袋と同じ白色のおしゃれなコート。
「手袋には負けるけど、こうしてれば寒くないよ」
「……そうだね!」
確かに、ポケットの中は英真の体温で温かくなっていた。
貸してもらった手袋もほんのりと温かみがある。
寒さで冷たくなっていた陽菜の両手は、温かさで包まれた。
英真の優しさに、心の中までぽかぽかしてきた気がする。
「手袋、あったかいでしょ?」
「うん、あったかい。ありがとう、英真ちゃん」
陽菜はちょっとだけ嘘をついた。
確かに、手袋は温かい。
でも、一番温かいのは。
ポケットの中のつないだ手だった。
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