本編

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 三年生のチーフでもある榊由美まで頭を下げてくる。藤田は次第に追い込まれて行く、グラウンドでは部員が必死に走っているので、いつまでも抜けてはいられない。様子を見にこられたら大変だ。 「榊チーフマネージャーまで。本当に勘弁して下さいよ……うううっ」無理だといっても引き下がってくれない「この二人、部長よりバスケ部内で力あるしなあ、断ったら……良くないのわかるけど。綾小路かあ……」ぶつぶつと聞こえない声で想像してみて頭を左右に振る。  バスケ部の仲間がチラチラとこちら見ているのがわかる。もし二年生のチーフマネージャー信者にバレでもしたら、今後楽しい部活生活は送れないだろう未来があった。絶対に呼び出されて説教され続けてしまう。 「ねっ、お願い! 今日明日しかないの!」 「藤田さん、本当に頼むわよ」 「うううっ……わかりました、わかりましたよ。でもこういうの本当に勘弁して下さい。私綾小路って凄く苦手で」 57ccdfe5-3396-40d4-ac24-96ecdeb63cff  藤田は涙目になってうなだれるとお願いを引き受けると言ってしまった。人生でもこれほど乗り気ではない案件は他にない。 「ありがとう藤田さん! もうこういうのしないから、ごめんね!」 「ありがとう。もし今後何か希望があれば、ワタクシ達が何でも相談に乗るわ」  必ずお返しはするからと言われても、それはそれで恐ろしいきがしてしまう。どっと疲れてしまった。 「放課後に報告します。もう戻って良いですか?」 「うん、ヨロシクね!」  満面の笑顔が弾ける。グラウンドに戻って走り始めると大きくため息をつく。 「あーもう、なんで綾小路なんだか。はあ……憂鬱」 ◇ 「あああもうやだな。だからってバックレるわけにもいかないし。はあああ」  あれから一日でどれだけため息をついたかわからない。席につくと綾小路のことを見た。目が悪いせいで最前列に座っている。周りに誰か居るようなところでこんなことを話したくなかったが、意を決すると立ち上がり、彼女の前にやってくる。 「ちょっと綾小路」 「はい、何ですか藤田さん?」  腕組をして仁王立ち、睨んで視線を下げて来る。 「話あるから廊下にきて」 「……はい」
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