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ひかりに抗議されるもどこ吹く風でニコニコしている。親友に何を隠したところで、というところだろう。由美にしてみれば、ひかりが幸せそうなのが一番うれしい。
「ひかり先輩、ほら早く!」
「ゆ、悠ちゃんってば!」
クラスでクスクスと笑いが起きる、同じ高校生でも子供だなと。ひかりは顔を赤くして教室を出て行く、嬉しいけれども恥ずかしい。
「あのね悠ちゃん、そんなに急がなくても時間は一杯あるから大丈夫だよ」
「そうですけど、早くひかり先輩と話がしたくて!」
全く違う意味だというのはわかっていたけれども、その台詞が自然と笑みを誘う。意図はどうあれ嬉しい気持ちにさせてくれるから。
「そ、そうなんだ……あははは、じゃ行こっか!」
チラッと教室を見ると、由美が手を振っていた。お幸せに、目がそう語っているのがよーくわかった。 苦笑すると前を向く。学校自体は午前中で終了した。ひかりが言うように時間はたっぷりとある。
「大切な話はお家でするとして、お昼時間だねっ」
「そうですね。今日は弁当持ってきてないし、学食もやってませんし、どうしましょうか」
生徒玄関でそんな話をしていると、倉持時雨と西田真琴が通り掛かる。他にもたくさんの生徒でごった返していた。
「なに木原、あんたあんなに急いで出てったのにまだこんなとこにいたの?」
「おお倉持か。居て悪かったなってのはアレだけどさ、今帰るところだよ」
「ふぅん。それで藤崎先輩とデートか、いいご身分ねー」
隣に居る人物に見覚えがあった、それもごく最近。
「えっと、僕のとこ知ってるのかな?」
何故か名前を呼ばれたので首を傾げた。ひかりからは面識はない、部活関連の生徒でもなかったし、と考えるも答えが出てこない。
「教室に木原を連れてきた時に多分クラス全員先輩の名前を覚えた」
6
淡々とした感じで西田が理由を説明した。 なるほどそれはあり得る話で、一方的に名前を知っていても自然だ。あの時はそんなこと全く考えても居ない。
「あー、あははは。そっか、そうだね」
「俺とひかり先輩はそんなんじゃないってーの」
「うわっ、ひかり先輩だって。やーらしい、木原エッロ!」
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