本編

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 台詞との関連性は殆ど無い、なのに倉持がそう言うとそんな感じに聞こえてしまう。ひかりは口を結んで眉を下げている、あるあるの光景だ、高校では。  「倉持、お前なぁ、はあ。これから昼飯に行こうかなって話してたんだよ」  何を言っても口では勝てないだろうと見切りをつけてしまう。それは大正解、喋りで男がかなうはずがない。大人しく引き下がって、受け入れて、それで世界は成り立っている部分すらある。 「そうなんだよねー。どうしよっかな」 「それならクランベリーに行かない? 私そこでバイトしてるのよね、サービスするわよぅ」  ふっふっふっ、と怪しげな笑いを浮かべる。ファミレスで近くにあるので、この界隈で知らない奴らは居ない。安価でメニュー豊富、二号店も計画されているらしい。 「あそこの制服凄く可愛いよね。クランベリーかぁ、ね、悠ちゃん行ってみよ!」 「まあ、ひかり先輩がそう言うなら」  倉持の笑いが気になりながらも承諾する、どうにも変な感じがぬぐえない。行くのは別にどこでも良かったので、素直に乗っかっておく。 「じゃあ行きましょ!」 「え、何、お前らも一緒かよ」  言い出したのは倉持だが、西田も隣で頷いている。流れから一緒と言われてもおかしくはないし、普段なら嬉しい。 「そうよ、デートじゃないんでしょ、ならいいじゃない!」 「あー、はあ。わかったよ、強引だな倉持は」  ひかりがそれを見て笑っていた。押されたら嫌と言えない性格なのを知っているから。それぞれが軽く自己紹介をして、商店街にあるクランベリーへ入る。 「いらっしゃいませ、クランベリーへようこそ! って時雨じゃない」 「今日の私はお客ですー。四人ね」  右手を突き出して四を示し、客であることを強くアピールした。アルバイト先だと言ってたのでそういうのもあるだろうと笑う。すると女性店員があからさまに倉持とひかりを見比べて。 「あーこれは時雨、残念!」  などとやり返す。何が残念かは説明をしないけれども、ひかりは苦笑してしまう。 「はあ? おばさん何を残念って!」 「おい倉持、大学生相手におばさんはないだろ。失礼だぞ」   「そうよ時雨、大学生のお姉さん相手に何言っちゃってるのよ。君、今日は局地的サービスデイにしちゃうからね」
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