本編

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 いくら何でも暴言過ぎるだろうと木原が口を挟む。すると時雨が振り向いた、女性店員はニコニコで悠に妙なサービスデイをお知らせして来る。 「ふん、アラサーが。さっさと席に案内しなさいよねおばさん」  頑なにその態度を貫き通す、倉持の性格ってそんなだったんだ、と思ってしまった木原だ。 「倉持、そういう態度良くないぞ」 「時雨、いつものことだから。叔母さん席」 「はいはーい、ご案内しまぁす」  あからさまに悪態をつく姿に小言を一つ。それにしても意外だったのは西田だ、こちらはそういうことを絶対に言わないだろうと思っていたのに。 「西田までおばさんって」 「私のは正しい叔母さんだから良いの」  言葉で言われてもまったく意味不明だが、文字にすると一目瞭然。けれどもそんな説明をわざわざすることはなかった。何のことはない、西田母と倉持母は姉妹、それで真琴にとっては倉持母が叔母さんだ。 「まあまあ悠ちゃん、ほらいこ」  四人がけのテーブルに連れて来られる。メニューを広げるとやたらと沢山あった。何ページあるんだろうとペラペラとめくってしまった。 「うわ、随分と一杯あるなこれ!」 「凄いね。こんなにあると何を頼むか迷っちゃうなぁ」 「オススメはBランチのスペシャルよっ、こーれ」  店員がBランチを指差しながら、わざわざ木原の耳元で囁く。 吐息がかかりドキッとしてしまった。ファミレスで真っ昼間から何をしているのやら。 「あれ、スペシャルって何ですか? これってBランチとしか書かれていませんけど」 「秋子スペシャルよ。きっといいことあるわ」 「じゃ、じゃあそれでお願いします」  それぞれがオーダーすると秋子と名乗った店員は裏に行ってしまった。妙に距離が近いし色っぽいなと感じる木原だ。 「ところで、木原と藤崎先輩ってどんな関係? やっぱもうアレかなアレなのかなっ、アレだよね!」 「何だよアレって、ひかり先輩が迷惑してるだろ」 「あははは、僕は別にアレでも良いんだけどな」  店内を見回して、自分達以外にも生徒がいるなぁなどと確認する。別の高校の奴らも少し混ざっていた。 「えーっ。ただのお知り合いって感じじゃないわよねぇ真琴」 「単なる友達でもない。ただの友達は朝夕同伴しないし、仲良く昼食にも行かない」
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