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同じランチを頼んだ西田と比べ、スープやデザート、ケーキまで別に並んでいた。明らかにセットの範囲を越えている、二品か三品は。
「あの人が勝手にやったことだから、千円で良いのよ。いいから食べちゃって」
「そ、そうか。じゃあ遠慮なくそうさせてもらうよ」
全員が見事なまでのスルースキルを発動し、ただ食事を楽しむことに専念した。店内を見る。アルバイトの店員は、かなりの露出がある制服を着ていた。
「倉持も普段あの制服着ているんだよな?」
「そうよ。な、なに想像してるのよスケベ!」
鎖骨のあたりまで開いていて半そで。フリルがあしらわれていて、スカートは短い。ヘッドドレスまでつけて、メイドとかウェイトレスとか、なんだか色々混ざっている。
「お前なら似合うだろうな。夏休みもバイトするのか?」
「一応その予定だけど、他に希望者居たらどーかな? 私って穴が空いたときに急遽埋めるためにって、通常シフト少な目なのよね」
学生に限らず、穴埋め要員が居ると居ないでは、責任者の頭痛の度合いが果てしなく違った。減る時は突然減るのに、増やそうとするとかなり難しいのが従業員。
「ふーん。まあ要領よく出来そうだしな、いつもの感じで働いてるのが浮かぶよ」
「まーねぇ、別に大変だとかは感じないわ」
ひかりがやけに真剣な表情で料理を口にしていた。どうかしたのかと思ってしまうほどに。
「ひかり先輩、なにかありましたか?」
「えっ、いや、ここの料理とても良く組み合わせが考えられてるなって。悠ちゃんもそう思わないかい」
「そうなんですか?」
例のグラタンの組み合わせをスプーンでより分けたり、サラダのドレッシングだけを口に含んで目を閉じたり。テイスティングとでもいうのだろうか、味をしっかりと確かめる。
「うん。これ作った人とても凄いよ。僕も見習わなきゃね!」
「これ作ったのお母さんだけど、そんなに凄いんですか?」
いまいち良くわからないと、フォークをくわえながら尋ねる。マナーが良い行為とは言えないけれども、今は注意する人物はいない。
「そうだよ、ここまでされたら僕なんかじゃ全然敵わないよ。悠ちゃん、夏休みに何回かここ来よう、凄く勉強になるよ」
「はい!」
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