本編

26/78
前へ
/147ページ
次へ
「ここ、三日後は部活午前だけだからさどうかなって。前の日の夕方に仕込みするから、悠ちゃんも手伝ってよね」 「はい!」  初回の計画を決定した。そこで悠は例の相談を持ち掛ける。もうおんぶにだっことはこれだろう。 8 「ひかり先輩、綾小路さんが来てくれたら、俺どうしたらいいんでしょう?」 「どうしたらって、悠ちゃんはどうしたいんだい?」  それがとても大切だと、悠の意志を確認する。こういったことだけでなく、常に意志確認は重要で、取り違えると勘違いで大変な結末になることなどいくらでもある。 「出来れば話だけじゃなく、連絡先を知りたいとか、無理でも次の約束をしたいとか」  次第に消え入るような声になっていく。 なんの経験も無い、ひかりだってそうだけれども微笑む。 「じゃあ、僕がそんな感じになるようにしてあげるから、悠ちゃん頑張るんだよ」 「ひかり先輩が? ありがとうございます。何から何まで頼ってすいません」 「その代わり、ちゃんと僕のお手伝いするんだよ?」 「はい! 何でも言ってください!」  そのようなことを言わずとも、昔から嫌と断られたことはない。ひかりはひかりで、こうやって頼られるのが心地よい。なんなら依存してくれたらもっと嬉しいかもとすら思ってしまう。 「そうだなぁ、まずは悠ちゃんが習いたい料理を幾つか教えてね」 「そう、ですね」  役得、と言うのだろうか、趣味嗜好を自発的に聞き出すことが出来ることに、ひかりは少しばかり満足を覚えた。まるで新婚の二人のようだ、そんな妄想を楽しんでいる間、悠は真剣に何を教えてもらおうか悩むのであった。 ◇  前日に買い出しに駆り出された悠は、夜の商店街をひかりと二人で歩くことになった。喫茶店が閉店してから仕込みに取り掛かり、終わったのは夜も遅くなった辺り。何一つ文句を言わずに帰宅し、翌朝は一番でやって来た。 「おはようございます!」 「ははは、おはよっ。まーだちょっと早いよね」  時計は九時を指していた。喫茶店は十一時から開く、約束自体は十二時だったりする。気が焦っているのはわかるから、強くは言わない。それに一緒に居たいのはひかりの方だから。 「そうなんですけど、落ち着かなくてきちゃいました」 「そっか。まあいいや、お部屋においで」 「はい、お邪魔します」
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加