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悠が奥に行ってしまう。その時に扉が開いて客が二人やって来た。半袖にミニスカート姿の藤田夏希と、薄手の上着を羽織ってロングのワンピース姿の綾小路柚子香だ。
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「あ、いらっしゃーい。来てくれたんだね!」
「こんにちは先輩!」
「初めまして、綾小路柚子香です」
部活の延長よろしくやって来ると挨拶をする。経緯どうであろうと、それは絶対だと叩きこまれている。
「うん、僕は藤崎ひかりだよ。そこ座ってね」カウンターの裏に回ると「うわぁ、綾小路さん、メチャメチャ可愛いし、凄い胸だよ! 僕なんかじゃ相手にならないよ」 独り言を漏らす。
「あの、お誘いいただきまして、ありがとうございます」
丁寧に礼をして席につこうとする、藤田は複雑な表情のまま対面の椅子のそばに立っていた。なぜこいつと同席しなければならないのか、などと今さら考えながら。
「まあそんな畏まらなくていいから。僕と不肖の弟子が作ったやつを評価してくれたらいいだけだよ」
「不肖の弟子で悪かったですね、パイここに置きますよ」
皿に載せたパイを手にして奥から木原が出て来る、お手伝いは約束のうちだ。そういうのが嫌いでも無いので負担とは全く思っても居ないが。
「えっ、木原! あんたなんでここに?」
「あっ、木原さん。あれ?」
二人が驚いてしまう。ひかりも少し意外だったし木原もだ。数秒のお見合い状態、それを最初に抜け出したのは木原だった。
「藤田、お前こそなんでここにいるんだよ」
「いや、そっちこそ何してるのよここで」
「あれれ、悠ちゃんと藤田さんは知り合いだったのかな?」
全く関係性が解らない、世間は狭いで終わらせるわけにもいかなそうだ。やっぱり来たか、などという反応よりも偶然がありがたい状況であったりするのは果たして。
「ゆ、悠ちゃんって! 藤崎チーフマネージャーがどうして木原を……ええ」
皆が皆、噛み合わない何かを抱えたので言葉が続かない。
「あー、そっか藤田はバスケ部だからひかり先輩に呼ばれてか。ほら前に話したことがあるだろ、家庭科クラブの部長だった人」
オマケがどういう意味かが理解出来て、口火をきった。それこそ二人の関係を知っていたとしてもオマケという単語はガッチリとはまる。
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