10人が本棚に入れています
本棚に追加
「お二人は本当に仲が良いんですね。木原さんは好い人なんですね、藤田さんがあんなに嬉しそうなの初めて見ました」
「うーん……あんたさ」
いつもなら冷たくあしらう藤田も、今回ばかりは何も言えなかった。怒る気持ちよりも、嬉しさが溢れてしまう。 顔がにやけないように引き締めるのでいっぱいいっぱいで。
「あ、いや、そういうわけじゃなくて……取り敢えず座ってくれよな」
「そうそう、まずは食べながらお話しよっか。悠ちゃん、出すの手伝ってよね」
「はい」
昨夜仕込んだ料理をせっせと運ぶ。味は保証されている、なにせひかりが担当したのだから。
「す、凄いです。これ全部お二人で?」
「俺は手伝っただけで、ひかり先輩が殆んど。今度作るときの勉強です」
あの綾小路が目の前に居る、それも私服姿で。考えることも出来なかったような現実に出会ってしまい、緊張してきてしまう。
「木原、何で綾小路に敬語なのよ?」
「え、だって、なあ」
「普通にお話していただいて構いませんよ?」
「ほらこいつもそう言ってるし、そうしなよ」
普段の扱いを思い出すと違和感しかない。それになにより木原のそういう余所行きのような感じの喋り方をあまり聞きたくはなかったのかも知れない、無理をさせているような気持になってしまって。
「んー、じゃあ出来るだけそうする」
「よーし、それじゃ食べよっか!」
「はい、頂きます。楽しみだ、ひかり先輩の料理久し振りですからね」
各自が思い思いに手をつける。すぐに、美味しい! との言葉が飛び交った。それを笑顔で見詰めているひかり、作りて冥利に尽きるとい感じだ。
「チーフマネージャー、凄く美味しいです! この人はやっぱりすごい人だったんだ……」
「感動の美味しさです。藤崎さん、プロの方みたいですよ。お店開けるレベルです。あ、お店で出してるんですよね」
店を出しているのは母親の方ではあるが、あながち間違いでもない。一部メニューはひかりでも充分に客に出せるだけのモノが作れる。ニコニコに感想を聞いていて、悠にも話を振る。
「へへへ、悠ちゃんはどうかな?」
「やっぱりひかり先輩の料理が一番好きです。この味がそのまま俺の三年間を表してるみたいで。こうやってまた食べられるのが凄く嬉しいです。何て言うか、ひかり先輩を尊敬してます」
最初のコメントを投稿しよう!