本編

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75dbfd9c-8409-4d22-812b-30cba7633a91  制服姿でおでこを出すような髪形、自然と全部を後ろに流していて、爽やか笑顔の女性。背丈は木原より十センチくらいかそれ以上小さい、女性としては平均的かも知れない位。スラリとスリムな体、腕も、足も、腰も、首も、胸もややすっきりとした感じで元気いっぱいだ。 「……あ、ひかり先輩。おはようございます、はは」  見るからに気が抜けた状態の彼を見て不審がる。いつもと違う、そんなのは何年も顔を見てきたらすぐにわかる。心ここにあらずと言った雰囲気がにじみ出ていた。 「あれれ、なんかおかしいけどどうしたのかな? 熱でもあるのかい?」  藤崎ひかりは、木原のおでこに手を当ててみるが、特にそんなことも無かった。自然とボディタッチしてくるあたり、勘違いをする男子を量産しそうな行為だが、相手を選んでやっているらしい。 「いえ……何でもありませんよ? それじゃ俺は教室いくんで」  などと言ってるそばから段差に躓いて転んでしまう。小さく「いてっ」声を漏らして壁に頭をぶつけてしまった。立ち上がろうとして今度は手すりに頭をぶつけてしまう。 「いや、変だって! ほら保健室連れていってあげるから、先生もう居るかな?」  手を引かれてひかりに無理矢理連れて来られた保健室、案の定まだ保険医はまだ居なかった。取り敢えず椅子に座らせて部屋を探してみる。 「取り敢えずお水だけでも飲んでね。うーん、悠ちゃんどうしちゃったのかな」  渡されたコップの水を飲みながら、悠はさっきのことを思い出していた。綾小路の顔が頭に浮かぶと、顔がにやけてしまう。  ひかりは明らかな異常を心配はするが、体調不良とも違うようでますます困惑する。この様子じゃ階段から転げ落ちそうな勢いだと、腕を組んで唸る。 「もう、悠ちゃん、教室まで送るわよ」 「えー、はい……ひかり先輩」  放心状態の悠の手を引いて一年三組までやってくる。始業近くなってしまっていたので、かなりの生徒が集まっていた。そんな中、上級生がクラスに入ってくるものだから注目を集める。しかもクラスの男子と手を繋いでだから尚更だ。別のクラスの人物というだけでも普段は目立つのに。 「えっと、悠ちゃんの席はどこかな?」
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