10人が本棚に入れています
本棚に追加
有無を言わさぬ物言いに、いつもなら頭から拒否する星川が渋々承知した。他の誰であっても横柄で、何でも嫌なことは嫌だときっぱり断ってしまうが、小さくため息をつくと視線を逸らして頬杖をつく。
「わかったわよ。気付いたらね、気付いたら」
「解れば良いのだ。ではな」
そんな二人を脇にして、クラスメイトは今日の話題を手に入れ、とても楽しそうに自説の主張を繰り広げている。 藤崎ひかり、名前までは伝わらないが木原悠との関係性が何なのかと盛り上がるのであった。
◇
放課後、一年三組の教室前の廊下に藤崎ひかりと榊由美がやってきていた。二人ともバスケットのチーフマネージャーで、公私関わらず一緒なことが多い。何のことはない、幼なじみというやつだ。
「ごめんください。北川さん、少々宜しいかしら?」
「はい! 榊先輩、あっ藤崎先輩も。どうかしましたか!」
チーフマネージャーが二人で居るのは部活ではいつもだったが、教室にまでこうやって来たのは初めてだった。何か急用の連絡でもあったのかと走る、部活の上下というのは厳しめだ、何せ体育系だから余計に。さらに言えば、規模がかなり大きいので、マネージャーだけでも六人もいる。
2
「悪いのですけれど、木原悠君を呼んでいただけるかしら?」
「北川さんごめんね、あんまり教室入るのも悪いから」
二人が並んで後輩に向かってほぼ同時に喋った。一人居れば充分だというのに一体何事なのか、理由など尋ねるような真似はしない。言われたことをするだけだ。
「すぐに連れてきます! ……うーん、先輩達二人とも木原と知り合いなのかな?」
体育館では全然姿を見ないので、どうにも二人との繋がりがわからないまま、木原の席にまで行く。ぼーっとしていて上の空、目の前に立っているのに顔を見ようともしない。
「おい木原、藤崎先輩と榊先輩が呼んでるよ。あっちだから」
「え? ああ……うん」
朝からずっとこの調子なのだ、だれた態度に北川は怒る気にもなれない。授業中も何度も先生に叱責されていたくらいだ、うるさくするわけでもないのでそのうちほっとかれたが。ようやく鞄を持って立ち上がるとノロノロと廊下へ歩く。一応北川も後ろをついていった。
「悠ちゃん。まだ具合悪いの?」
最初のコメントを投稿しよう!