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心配そうな表情でじっと顔を覗き込む、いまだにいつもと違って様子がおかしいまま。少しだけならまだしも、一日中となると気になってしまう。
「ひかり先輩……何ともないですよ……」
「ぜーんぜん治ってないじゃない。もう心配だなぁ」
明らかに変なのは皆が認めるところだろう、きっと初対面の人物であってもそれがわかるくらいに。実際、榊由美はどうしたのかしら? という感じで首を傾げている。
「ひかり、今日はあまりマネージャーの仕事も無いわ。ワタクシに任せて貰って結構よ」
様子を見て納得したので、自由に出来るように役目を全て引き受けると買って出た。部活に来たとしても落ち着かないだろうと。
「ごめんね由美。悠ちゃん帰るよ、僕が送っていってあげるから。北川さん、ありがと」
ひかりに手を取られると木原は大人しく引っ張られて二人は行ってしまった。保護者、何と無くそんな単語が頭に浮かんでしまう。
「いえ、お疲れ様でした! ……家に送ってく? そ、そういう仲なんだ」
ぼそっと呟いたのを眼前に残った榊由美が聞いたのかどうかはわからないが、はっとして顔を向ける。
「北川さん」
「はい、榊先輩」
直立不動で言葉を待つ、余計なことを口走ってしまったなと。何を言われるかビクビクしていると「ありがとう助かったわ」にこやかに語るも、その瞳が余計なことを喋るなよ、と示しているように見えてしまった北川であった。
「悠ちゃんって学園前駅から電車だったよね、行き先は南駅かな?」
「……はい。電車……明日も話していいんだよなぁ」
学校からずっと手を繋いだままずーっと引っ張られていて、あちこちでその姿を見られていた。だが悠は全く意識に残っていない。二人は松濤南駅で下車する、この駅自体は何度か来たことがあったが、そこから先はひかりは初めてだった。
「お家はどこかな?」
「……え、ああ、あっちです」
何となくあっちと指さされてしまい、はぁ、と短くため息が出てしまう。危ない、一人で帰すと本当に危ないと再確認する。
「あっちって。もう、生徒手帳貸して」
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