出会い

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🚨初っ端から少し暗めで、情緒不安定な部分があります。 ▱▱▱▱▱▱ 突然ですが俺、樫野陽介(18)、初めて義兄ができました。 ーー遡ること1週間前 学校とバイトが終わりいつも通り家に帰ると、俺と父さん以外の男物の靴と女物の靴があった。 会社の人と宅飲みか?なんて思いながらリビングの扉を開けずに部屋に戻ろうと階段を数段登ると、リビングの扉が開く音がして、陽介!と父さんの声がした。 「おかえり、ちょっと話があるから来てくれないか?」 ちょいちょいと手招きをされて不思議に思いながら階段を降りてリビングの扉を開けると、50代くらいの派手すぎないピンクの服を着て、小さなカバンを持った上品な女性と、その隣には20代前半くらいの男性がいた。その男性もきちっとスーツに、撫で付けた髪、黒い髪と瞳が爽やかだ。 俺が無言でペコリと頭を下げると、男性はニコリと微笑んでフリフリと手を振った。 「陽介、父さん再婚することにしたんだ。」 「…は?」 再婚?何言ってんの? 一瞬、頭が真っ白になって本当に何を言っているのか理解できなかった。   「…母さんは?もういいのかよ。」 呻くように言うと、父さんはポッと頬を赤くして照れたように言った。 「ほ、ほら!父さんもそろそろ前に進むべきだと思ってなっ!」 再婚したらその人が大切だから死んだ母さんに手を合わせたり、仏壇の水を変えたり、お墓参りに行ったりしなくなるんじゃないか、母さんの存在自体を忘れ去ってしまうんじゃないかって怖くなった。 拳を握りしめて、唇をかみしめて俯くと、ギュッと抱きしめられた。 「陽介の言いたいことも分かる。再婚なんて嫌かもしれないけど…それでも認めて欲しい。」 「わかっ、…てんならっ…すんなよっ…!」 床の木目がぼやけて目頭が熱くなる。 「父さんは母さんのこと忘れたりしない。…でも、いつまでも引きずっていたら母さんが悲しむぞ?」 「っ、いやだっ…母さん、悲しませたくないっ…」 エグエグと嗚咽を漏らしながら暫く泣いた。本当は再婚なんて認めたくない。けどいつまでもグズグズして立ち直れないでいて母さんが悲しむなら、俺は前に進む。 父さんは俺にソファに座るように促し、父さんも隣に座った。 「陽介、この人は新しいお母さんになるヒロ子さん。お隣がその息子の岳くんだよ。彼はおもちゃ屋さんのオーナーさんなんだって。23歳にしてすごよね。」 おもちゃ屋さんってなんか可愛いなと思わずプッと吹いてしまった。 「あっ、すみません。バカにした訳じゃないですよ。」 「いいよ。気にしてないよ。…ふふ、今日からよろしくね。ようちゃん。」 何故か優しい笑顔に背筋がゾクリとした。 「ようちゃん!いいわねぇ!私にもようちゃんって呼ばせてちょうだい?」 「是非」 「あら、畏まらないで?私はあなたの“お母さん”なんだから」 違う。違う。違う違う違う!!お前は義母であって母さんではない!お前はどう足掻いても“母さん”にはなれない。俺は図々しい義母に嫌悪感を覚えた。二度とお母さんになろうと思うな。気がおかしくなりそうになった。 怒りを鎮めようとフーフーと鼻息を荒くしていると、突然トンと肩を叩かれた。 ビクリと肩が跳ねて、足元に影ができていたから見上げると、岳さんが立っていた。 周りを見るともう2人は部屋に居なかった。 「大丈夫?」 「…心配かけてすみません。…俺、お母さんのこと未だ引きずってるんです。もう3年も経つのに良い加減執拗こいですよね。」 はっ、と苦笑するとすぐにそんな事はないと言ってくれた。 「父さんは前に進んでるのに俺は前に進めない。」 「別にさ、お母さんのこと忘れろって言ってる訳じゃない。ただ、別の人と暮らすだけ。それだけだよ。深く考えないで?」 大きな手に髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜられた。そっか、俺は母さんに捉われ過ぎていたんだ。別に忘れなくて良いのか。 ホッと安心して心が少し軽くなると勝手にポロリと涙がこぼれ落ちた。 岳さんは俺のそばにしゃがみ込むとギュッと俺の手を握った。顔を覗き込まれていだけれど俺は構わず俯いて泣き続けた。 すると突然、顔が更に近くなって驚く間も無く唇に柔らかい何かが触れた。 え…顔が近い…柔らかい…なんーー…… 「ふふ、びっくりして涙止まった。可愛いね。」 キッ…キス?!! 理解した途端、俺は爆発する勢いで顔を赤くした。 「な、何してんだよっ!」 「ごめんね。悪気はないんだよ。ただ泣き顔がクるなぁと思ってつい。」 クスリと笑うと岳さんはスッと立ち上がって俺に腕を伸ばした。手を掴んで立ち上がると岳さんはニコリと微笑んだ。
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