21.女王のプライド※

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21.女王のプライド※

「………っん…」  咄嗟に唇を噛んで、漏れ出る声を堪えました。  冷たい部屋の中で私の身体だけが燃え上がるように熱いのです。ベッドの上で、繋がれていない手足はいつだって逃げ出せるのに、私は人形になってしまったように動けませんでした。  力一杯噛み続けた唇は切れたのか、血の味がします。しかし、そんなことはどうでも良いほど私は必死でした。女王たるもの、善がったりしてはなりません。奴隷の手で快感を得るなど、笑い話も良いところです。  大きな手は露わになった双丘を撫で回し、組み敷かれた私は出来るだけ他のことを考えようと明日お屋敷で出す夕食の献立に思いを巡らせました。ロカルドは魚より肉が好きなのです。こんがりとローストした柔らかな仔羊の肉に、ナイフを入れた時の彼の嬉しそうな顔ときたら─── 「あっ………!?」  思考が再び現実に引き戻されました。  ぴったりとフィットした黒いボディスーツの隙間からロカルドの指が入って来ようとしたのです。  特殊な構造に横からの侵入を諦めたのか、ロカルドは私の背中に手を回してチャックを一気に下ろしました。ずるずると引っ張られると、胸から腹、太腿を最後にレースのショーツが姿を見せます。  今まで私の奴隷に、こんな無礼を許したことはありません。  しかし生娘のように自分の身体に手を回して恥ずかしがるようなことはしません。私は気高い女王なのです。どんな時でもプライドを忘れず、強く振る舞わなければ。  ロカルドの指が確かめるように私の腹の上を滑って、黒いショーツの上で止まります。頼りない薄い布は下着としての役目を放棄し、どうやら溢れた蜜がシーツを汚しているのが分かりました。持ち主である私に似て、まったくもって使えないショーツです。帰ったら速攻で捨てるべきでしょう。 「女王様……濡れていますが」 「安物の下着なの。きちんとしたものを穿いていればこんなことにはならないわ、これは事故よ」 「そうですか。良ければ、貴方の奴隷が舐め取りましょう」 「えっ……!? あ、ちょっと待って!」  下着がずらされ、冷気を感じる前に湿った舌が押し当てられました。じゅるっと嫌な音を立てて下品に舐め上げられ、なんとも言えない羞恥心が背中を駆け上がります。  強くありたい。  そう願っているのに。  快感を逃がそうと躍起になる私をロカルドの手が押さえ付けます。蜜を吸い上げられながら胸を弄られると、自分が何者なのかなどどうでも良くなるぐらい頭がフワフワしました。 「んんっ、あ、だめ、ロカルド……!」 「貴女が言っていた通りだ。切羽詰まった限界の顔は確かに儚くて美しい。教えてくれたことは発揮出来ていますか?」 「んぅ…ッ、お願い顔を離して、そこで喋っちゃ…」 「男と女の身体は違うので、少し手加減も難しいですね。特に、女王様は敏感でいらっしゃるようなので」  舌が引き抜かれ、代わりにより太い指が入って来ます。  二本、三本と様子を見るように増やされた男の指が、生き物のように膣内で蠢くのを恐ろしく感じました。でも、もっと恐ろしいのは、その一方的な愛撫に情けなく悶えている自分自身です。  もはや制御の効かない身体は、馬鹿になったみたいにダラダラと蜜を垂れ流します。私は上に乗るロカルドの顔を見ることが出来ません。彼は非常に意地悪です。 「すみません、こちらのことを忘れていました」 「っはぁ……あっ、そこ、待っ……ッ!?」  はぐっと肉芽を唇で挟まれると、私の頭は真っ白になりました。ただただビクビクと震える肢体を見下ろして、従順だったはずの奴隷が笑います。  完全に立場が逆転したことを知るには十分でした。
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