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プロローグ
ある年。
埼玉県久喜市の住宅街にある空き地に一軒家を建てた夫婦がいた。
その一軒家は黒い瓦屋根の白い壁の木造一階建て。
何の変哲もないその家には地下室があった。
でも、玄関の床板の内の一つを押して、板がめくれて出てくるレバーを引かないとは入れないようになっていたので、この部屋について教えられていなければ、たとえこの家に住んでいても見つけることは難しいだろう。
そして、この家を建てたのとは違う夫婦が其処に住んだ。彼等は地下室の存在を知らされていなかった。
時が経ち、夫婦が住み始めてから三年。
養護施設から一人の男の子を引き取って一緒に暮らすことにした夫婦。
これは家を建てた方の夫婦からの頼み事だった。
『もう育てられません。どうか、大切に育ててやってはくれませんか。』
と言われたそうだ。
男の子の本名は二条政河だったが、家に住んでいる中島昭広・久美子夫妻の息子になるということで、中島政河と名乗らせることにしたそうだ。
引き取った当時、男の子は二歳だった。
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