ヤンデレ王子が嫌で夜逃げしましたが、隣国にも変な王子がいました。

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   *  約束通り、リッツ王子は伯母クレアのもとへと送り届けてくれた。二人は馬を並走して色々な話をする。 「その服はもう量産されているのですか?」 「この着ぐるみですか?いえ、まだ試作段階です。もうすぐ狸とレッサーパンダの着ぐるみが届くのでそれを着てからですね。あ、ライオンも」  なぜかリッツ王子は着ぐるみに興味津々なようだった。 「試作ができたら見てみますか?」 「ぜひお願いしたいですね。着心地はどうなんでしょうか」 「最高ですよ!暖かくて馬乗りにも最適です。逆に夏用は通気性のある涼しい生地を考えないといけませんが」 「ふむふむ」 「今私の着ているの服の問題点としては、トイレがしにくいということですね。一体型なので面倒くさいんです。だから新たに発注したものは、セパレートタイプとワンピースのドレスに近い形です。こんなのがほしい、とデザイナーに依頼して、細かい部分はおまかせしました」 「それはおもしろいですね」  リッツは目を輝かせている。 「でしょう?上手くいったら量産予定です。あ、ちなみにこのもふもふの猫耳触ってみます?最高に気持ちいいんですよ」  リッツは馬を止め、馬に乗ったままミリナの側に近づき手を伸ばした。ふわっといい香りがミリナの鼻をくすぐり、危うく落馬するところだったのをどうにか持ちこたえた、というのは彼女だけの秘密だ。 「何て気持ちいいんだ……」 「でしょう?生地は私が選びました。ただ、どうしてもコストが嵩むので、量産するときは生地から練り直しですね」 「トトムでも売っていいだろうか?貴族に売るのであれば、これと同じ生地で問題ないと思う。さすがに一般の民に同じ生地は値段が高すぎるだろうが、貴族に高額で売りさばいた後なら、ある程度余裕もできるだろうし」  王子様……貴族を出汁に使う気満々だな、と思わずくすっと笑みが溢れるミリナ。 「ん?何か?」 「王子様も商売人なんですねぇ。しかもけっこう悪徳な」 「そうか?国益のためだぞ?あるところからお金を吸い上げるのは王族の役目だ。もちろん私も購入する」 「ありがとうございます。ロイヤリティは九十パーセントでお願いしますね」 「いや、それはミリナ嬢こそ悪徳では?王室が破産してしまうではないか」  リッツ王子は声を上げて笑った。体が細かく揺れ、振動に合わせてきらきらと粉が舞うように輝いている。  本物の王子様は、体からきらきらな粉が生成されるのだとミリナは驚いた。ん、もしかして、このきらきらの粉を集めたら売れるのでは?……と思ったことはまだ誰にも伝えていない。 「職人やデザイナーたちに賃金を払わねばなりませんから」  このような会話を繰り広げていくうちに、伯母クレアの家に到着する。互いにもう到着したのかと驚くほど短時間に思えた。 「もっと話したかったのに残念だな」 「私もです」 「また商売の話をしに来ていいか?」 「もちろんでございます。狸とレッサーパンダの着ぐるみが届いたら、試着してすぐにお届けに上がりますね。あ、ライオンも。ライオンは勇ましいぶんかわいらしく作ったつもりです。リッツ王子にお似合いだと思いますよ」 「それは……喜んでいいのか?」  二人は馬に乗ったまま見つめ合い、声を出して笑った。  名残り惜しく、いつまでもその場を動こうとしない二人だった。 (了)
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