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 星へと続くかのように、空へと繋がる道を進んでいく。  ぼんやりと地平線に目をやっていると、吸い込まれそうな曙に心が澄んで心地いい。  壇は呼吸を深くして、夢見心地を楽しんだ。  少しずつ、周囲の岩がせり出してきていつの間にか森のようにガラス質の木が立ち並ぶようになってきた。  幹が太い木が、うねる様に身を捩る(よじ)らせて天を指す。  光を透かしてキラキラと輝き、弦を弾くような乾いた高い音を出していた。  まるでオルゴールか何かみたいに、ノスタルジックな気分になる音楽だった。  心に染み入る情景と、耳に心地よい音が、壇をさらに夢見心地にした。  ふと、透明で不思議な木々に触れてみたくなった。  足を止めると、じんわりと太ももの辺りに血が巡るのを感じる。  かなりの距離を歩いたはずだが、気分が良いせいか疲れなかった。  右手の中指で、幹を触ってみると温かみがある。  黄色みがかった光をたたえ、中を何かの液体が流れているようだった。  見上げてみると、幹から太い枝が幾重にも広がっている。  枝がさらに分かれ、徐々に細くなって葉をつける。  透き通った葉が、重なるほどに明るくなっていく。  そう、光を透過しているのだ。  この透き通った植物は、長い年月をかけて枝を産み出しながら身を捩ってきた。  まっすぐ伸びるベクトルに、枝葉ができるとき別の力が加わる。  人生が枝分かれするとき、その地点に広場ができるのだろう。  もしかすると、自分は枝分かれした道を見ているのかもしれない。  そして、同じような木が無数に生えている。  たくさんの木を眺めていると、人混みも悪くないような気がするのだった。  先ほどから歩いてきた道だけは、ひときわ輝いて森の中に横たわっていた。  この先に、何が待っているのか、壇はどうしても知りたくなった。  道自体も生き物のような、深い謎を感じさせる。  壇は再び道を辿(たど)って歩き始める。  行く先に、どんな驚きが待っているのだろうか。  また地平線に視線を投げてぼんやりとした。
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