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 裏山の丘の上。  海を見渡す高台に、檀 将(だん まさし)は今日も立っていた。  拳を握りしめ、大地に足をめり込ませ、眼で星を射抜く。  最近は、毎晩こうして夜空を見上げるのが習慣になっていた。  目線が、いつも遥か彼方を見ている。  そう、人生の終着点を。  行く末は、死だろうか。  だとすれば、自分はもう死んでいる。  だれにも聞けない問いを、星に問う。  星降る夜、とは良く言ったものである。  空一杯に星屑(ほしくず)がちりばめられている。  今夜はまるで光のシャワーを浴びているかのようだ。  遠くの海原は、空との境界線をくっきりと描いていた。  何も成さずには死ねない。  だが星空に手を伸ばしても、決して届かない。  近い星でも500光年。  約5000兆キロメートル離れている。  想像力の及ばない単位である。  もちろん月なら現実的な距離だ。  だからと言って自分が行けるとは思えない。  夢とは、そういうものだ。  どんな夢でも、信じれば叶うなんて、アイドルやアニメのキャラクターが言ってたっけ。  本当に、叶ったら(うれ)しいのかな。  道端に座り込んだ。  見れば見るほど、自分が小さく感じる。  夜が更けてきて、眠気が差した。  遠くで犬の鳴き声が聞こえた ───
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