12、侯爵家の一族

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 リリアの体調がよくなると、ライザスは町へ連れ出してくれた。  高級レストランで食事をし、観劇鑑賞をしたあとふたりで町を歩いてまわる。  昔、妹がやたら自慢していた恋人とのデートはこんな感じなのだろうかとリリアは思った。  リリアがそっとライザスの手に触れると、彼は照れくさそうに目をそらした。  それでも、彼はこれをきっかけにリリアの手をぎゅっと握りしめた。  まだスキルの効果は持続している。  もうしばらくこのままでもいいのに、とリリアは思うようになった。  しばらく歩いていると、高級衣装屋の前に豪華な馬車が停まり、中から真っ赤なドレスを着て宝石をたくさん身につけた華やかな婦人が出てきた。  彼女があまりにまばゆいので周囲の注目を浴びている。  その婦人がライザスの姿を目にして驚いたように目を見開いた。 「ライザス? こんなところで会うなんてめずらしいわね」  婦人はひらひらした大きな扇を手に持ち、ふたりをじろじろ見つめた。  ライザスはリリアと手をつないだままである。 「叔母だ」  とライザスは婦人のことを差して言った。  リリアはすぐに挨拶をする。 「妻のリリアと申します」 「ローズですわ」  ローズは扇で口もとを隠し、リリアを上から下まで品定めするように見つめた。
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