2、虐げられてきた実家を出る日

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 リリアが魔力を有していたことを知った父は引き取って彼女を魔導士として育てることにした。  しかしリリアの魔力があまりに弱く、役に立たないということがわかったので、父はさっさとリリアを屋敷の離れに追いやってしまったのである。  それでも食事はきちんと与えられたことが唯一の救いだった。  しかし、それも理由があった。  リリアを【贄嫁】にするためである。 【贄嫁】となって嫁いだ場合、親族は対価として金を受けとることができる。  リリアを売って多額の金を得るだけでなく、このたび稀少な魔鉱石が大量に採掘されたのだから父は順風満帆だった。  ところが実は魔鉱石に関しては周囲に疑問の声が上がっていた。  魔鉱石採掘地を最初に見つけたのはゼネシス男爵であるという噂があるからだ。  双方の領地は山で隔たれており、ちょうど中間地点に採掘地がある。  魔鉱石がどちらのものか、男爵側と争っているようだった。  だが、格上の身分である伯爵家のほうが当然力があるので、近々魔鉱石は伯爵領のものと認定されるらしい。  どちらにしてもリリアには関係のないことだ。  どうせ、贄として嫁ぐのだから。
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