12、侯爵家の一族

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「どうだろう? あなたのために東の国から取り寄せた茶だ」 「ありがとうございます。とても美味しいですわ」  ふたりが会話をしていると、全員がめずらしそうに注目した。  それも、毒気のある表情だ。 「あの嫁は立場がわかっているのか?」 「ライザスさまに馴れ馴れしいな」 「お飾り嫁のくせに」  次々と心ない言葉を浴びて、リリアは複雑な心境で唇を引き結ぶ。 (仕方ないわ。この立場ならみんなそう思うもの)  最近ライザスがあまりにも妻の扱いをしてくれるものだから、リリアは忘れていた。  自分が出来損ない魔導士の【贄嫁】であるということを。  非難を浴びることは最初からわかっていたのだから、ほんの少しのあいだ我慢すればいい。  リリアがそう思っていると、ライザスはいきなり彼らに言い放った。 「俺は妻を愛している」  ぶはあっとひとりの男が茶を噴き出した。 「ちょっと、汚いわねぇ」  とローズが男を睨みつける。  茶を噴いた男はライザスを見て口をへの字にした。  他の者たちも呆気にとられている。  だが、ライザスはさらに続けた。 「あなたがたに伝えておきたい。俺は妻を愛し、慈しんでいる。今は何よりも妻が大切だ」
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