12、侯爵家の一族

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 一同ぽかーんとしている。  しかしライザスはかまわず続ける。 「俺の妻を侮辱する者は二度とこの屋敷に足を踏み入れることができないと思え」  全員しーんと静まった。  先ほどリリアを非難していた者たちも複雑な表情で黙り込んだ。 「さて、妻の紹介も終わったし、俺たちはこれで失礼しよう」 「え?」  ライザスは急に立ち上がると、リリアの手を握った。  リリアは呆気にとられ、まだ手をつけていないお菓子を惜しく思いながら彼とともに部屋を出た。  残された客人たちはしばらく放心状態だった。 「え? いや、誰……?」 「戦場に行き過ぎて頭がおかしくなったのか?」 「奥さまの力かしらね」 「ただの【贄嫁】に何ができるというのだ?」 「しかし、明らかに今までと違いますぞ」  先ほど茶を噴き出した男がそばにいたマリーに訊ねた。 「一体何があったんだ?」 「溺愛の力です」 「は?」 「ですから、溺愛の力です」 「意味わかんねーよ!」  マリーはぺこりとお辞儀をすると、全員に向かって言った。 「せっかくですからみなさまどうぞごゆるりとご歓談くださいませ。では私も失礼いたします」  マリーが退室すると、親戚たちは全員わけがわからないというような顔でざわついた。  ひとりだけ、ローズは扇を口もとに当ててぼそりと呟く。 「愛に溺れたら最後。破滅するだけよ」
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