13、拗らせたふたり

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 婚姻の儀式をおこなってから3ヵ月と半分が過ぎた。  もうじき4回目の満月を迎えることになる。  その前にふたりは新婚旅行に出かけた。  自然豊かな山地にある侯爵家の別荘地に数日間滞在する。  普段はライザスがひとりで静養するために訪れている場所だ。  今回はリリアが一緒だからなのか、ライザスは張り切ってさまざまな場所を案内してまわった。  美しい湖のある森や白馬のいる草原、古い建物が並ぶ町。  リリアは今までほとんど実家の離れにひきこもっていたので、自然に触れるのは久しぶりだ。  幼い頃に母と過ごした田舎町を思い出しては、なつかしさに喜びを噛みしめた。 「リリア、あなたの好きなホイップクリームのケーキだ。ほら、あーんして」  上級貴族専用のカフェテリア。  外でティータイムをするときも、ライザスはリリアとお互いに食べさせ合った。 「美味いか?」 「はい、とっても」 「では俺にもしてくれ」 「はい、あーん」  まさに蜜月のふたりにとっては激甘の日々で、護衛をする騎士たちは呆れ顔である。  それでもライザスは気にすることなくリリアを溺愛した。
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