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だが、それでも、兄たちに礼だけはしておかねばならない。
リリアは家を出る日にそれを決行した。
その日、リリアを見送る者は世話をしていた数人の使用人のみだった。
親切にしてもらったことはないが、それでも掃除や食事など身のまわりの世話になったので、リリアは使用人たちに礼を言った。
そしてリリアは馬車に乗り、7年過ごした実家をあとにした。
*
その頃マクベス伯爵家では、リリアの置き土産のせいで大変なことになっていた。
「おい! 誰だ? 俺の部屋を水浸しにしたのは!」
急いで使用人たちが駆けつけると、部屋中が水浸しになっていた。
「くそっ! 俺は風魔法が使えないんだ。おい、早くリリアを呼べ!」
「リリアさまなら早朝にご出発されました」
「なっ……! あ、あいつ!!」
兄がわがままを言って買い集めた高価な調度品や質のいい絨毯やベッドの布団や魔導書まですべて濡れてふよふよになっていた。
「くそー! あいつめー!」
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