13、拗らせたふたり

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 ライザスは鬼のような形相で剣を振り上げながら突進してきたので、驚いた男はリリア解放して逃げ出した。  逃げた男は騎士たちが追いかけていき、ライザスはすぐにリリアに駆け寄った。 「大丈夫か? リリア」 「ええ。旦那さまは怪我を負っていらっしゃいますわ」 「この程度、かすり傷だ」  だがしかし、ライザスは腕からだらだら出血している。 「申し訳ございません。旦那さまのご命令を無視して出てきてしまったから」 「何を言う。あなたは俺を助けてくれたではないか。あなたがいなければ俺は何本矢に刺されていたことだろう。まあ、その程度では死なないが」 「そ、そうですか。ご無事で、何よりです」 「ああ」  ライザスは安堵したように笑みを浮かべ、リリアの肩に手をやった。  リリアは急に緊張の糸が切れたように足の力が抜けて、そのままライザスに寄りかかる。  彼はリリアをそっと抱きしめてくれた。  その後、盗賊たちは騎士に捕らえられ治安隊に引き渡された。  幸い、襲われた馬車に乗っていた者たちも無事だったようだ。  リリアとライザスは残りの滞在期間を一歩も外へ出ずに過ごした。  このあいだにふたりで話し合いをして、これからのことを決めたのだった。
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