13、拗らせたふたり

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 ふたりが新婚旅行から戻って数日、ゲルト侯爵家はふたたびギスギスしていた。  ライザスの機嫌が悪いからである。  というよりも、彼はリリアを避けていた。  ふたりが邸宅内でほとんど接触することがなくなったので、使用人たちは不思議に思っていた。 「新婚旅行から帰って離婚する夫婦は結構多いらしいわよ」 「何でも相手の悪いところばかり気づいてしまって幻滅するのですって」 「旅行中にトラブルがあったみたいだけど、そのせいでおふたりは気まずくなったみたい」 「信じられないわね。あんなにベタベタしていたのに」 「恋は盲目というもの。旦那さまがやっと目が覚めてくれたと騎士たちは安堵しているそうよ」  使用人たちのあいだでは、ふたりが離婚するかライザスが愛人を迎えるか、どちらかだろうという噂が広まった。  だが、真相は少し違っていた。 「旦那さまが責任を感じてしまわれたの」  リリアはこうなってしまった事情をマリーに話した。  先日の旅行で盗賊に襲われたとき、ライザスは自責の念にかられていた。  盗賊相手に手こずったこと、離れた場所からの攻撃を察知できなかったこと、リリアを危険な目に遭わせてしまったことなどが理由だ。  騎士たちは以前のライザスはこんなことはなかったと言った。  もちろん彼自身もそのことをわかっている。  このままではいけないと思ったライザスはリリアと距離を置きたいと申し出た。  リリアは驚いたが、ライザスの邪魔になる存在ではいたくなかったため、彼の申し出を受け入れることにしたのだ。
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