13、拗らせたふたり

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「……ということなの」 「うーん。極端なんですよねえ」  話を聞いたマリーは首を捻った。 「私も悪いのよ。魔力が弱いことは自覚していたけれど、あんなに自分が無能だなんて思いもしなかったわ」 「でも旦那さまの命をお救いしたのでしょ? だったら十分お役に立っていますよ」 「正常な魔導士ならあの程度で魔力が尽きたりしないわ」 「だからと言ってお互いに会っても目も合わせないなんて、そこまでする必要あります?」 「そのほうが諦められるもの」  旅行から帰るとライザスと一緒にいることはなくなった。  晩餐だけはともにしているが、彼はひとことも口を利かず、リリアと目も合わせなくなった。  周囲は元に戻っただけだと言うが、ライザスの笑顔と優しさを知ってしまったリリアは以前と同じようには考えられず、毎日鬱々とした日々を過ごしている。 「時間が解決してくれるわ。どうせもうすぐ彼はスキル書き換えで元に戻る予定だったのだから。少し早まっただけなのよ」  リリアはそう言って自分を納得させるのだった。
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