13、拗らせたふたり

8/10
前へ
/192ページ
次へ
 中途半端な優しさはさらに傷つくだけだ。  それはお互いにわかっていたこと。  それなのに、この関係が偽りであることをリリアもライザスも忘れてしまっていた。  ライザスはスキルのせいなのである程度仕方がないにしても、リリアは素のままなのだから、わきまえておくべきだった。  彼の優しさに心を持っていかれてしまったから。 (好きになってしまったのよね)  リリアは決して誰にも言えないこの気持ちをひそかに胸中で呟いた。  *  一方のライザスも苦悩していた。  リリアを見るとすぐ抱きしめたくなってしまうので、決して目を合わせようとしなかった。  だが、それも3日程で不眠や食欲不振などと言った禁断症状が現れた。 (失恋がこれほど苦しいものとは思わなかった)  ライザスはリリアに会いたい衝動を耐え忍びながら日々を過ごしている。  その反動で酒を浴びるように飲んだ。  しかし飲んでも飲んでも酔えず、余計にリリアのことばかり考えてしまう。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1030人が本棚に入れています
本棚に追加