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何本目かのワインを開けたところで、執事のアベールが部屋を訪れた。
「旦那さま、ローズさまがお見えになっておりますが」
ライザスはちっと舌打ちしてぶっきらぼうに「入れ」と言った。
ローズは真っ赤な羽のついたひらひらした扇を手に持ち自身も赤いドレスで現れた。
ライザスはローズの顔など見ることもなく、ふたたびグラスに酒を注ぐ。
「あらまあ、グダグダなのね」
「うるさい。説教なら聞かない。帰れ」
「叔母に向かってその口の利き方はいただけないわね」
「何しに来た? 金か?」
「いやだわ。あたくしがあなたから金を巻き上げたことが今までにあって? それはあたくし以外のクズどもに向けるセリフよ」
ライザスの親戚たちは欲深い。
両親のいないライザスが戦場で死ねばその遺産を自分のものにできると思っている者たちばかりだ。
まあ、ライザスはきちんと遺言書を作成しているので問題はないが。
「嫁と不仲なのですって?」
「誰に聞いた?」
「もう親戚中の噂になっているわよ」
「情報を洩らした奴を見つけて拷問してやる」
「それでこそライザスだわ」
「とにかく、これは夫婦の問題だ。あなたには関係ない。帰ってくれ」
「可愛い甥のことが心配なのよ。縁談話なら山ほどあるわよ」
それを聞いたライザスはテーブルにドンッとワインの瓶を叩きつけた。
瓶はビシビシとひび割れが入り、パンッと弾けて中身が飛び出した。
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