14、ふたたびのスキル付与

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 リリアとライザスがお互いに会わなくなって、とうとう満月の夜を迎えてしまった。  ふたりはふたたび大聖堂で向かい合い、魔導士と神官たちに囲まれて、2回目のスキル付与をおこなう。  数人の騎士たちが固唾を飲んで見守っている。  今度こそライザスにふさわしいスキル付与をと願っているのだろう。  そしてアベールとマリーはもちろん、なぜかローズもいた。  今日この日を境にライザスは変わってしまうだろう。  しかしもうリリアはある程度の覚悟ができていた。  ここ数日間のライザスの塩対応にようやく慣れてきたところだから。  向かい合って顔を合わせるとライザスは突然切なげな表情でリリアを見つめた。 「リリア」 「はい、旦那さま」 「もし君への愛情を失っても、俺は責任を持って君に生涯不自由のない暮らしを約束しよう」 「ありがたいお言葉恐縮ですわ」 「そしてこれだけは言っておきたい」 「はい、何でしょう?」 「俺は一生、君以外の妻を持つつもりはない」  涙目になりながら真剣な顔で告げるライザスを見て、リリアは複雑な心境になった。  せっかく心の整理をしていたのに、こんなことを言われてしまったらまた余計な感情に翻弄されてしまう。  そんなふたりを騎士たちはぽかーんと眺めた。  アベールはなぜかもらい泣きしている。  マリーは真顔で突っ立っている。  ローズは白い扇を口もとに当てて笑みを浮かべた。
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