1031人が本棚に入れています
本棚に追加
リリアにとっては今までの人生で一番幸福を感じることができる環境だ。
これ以上の贅沢は言えないほどの、穏やかな日々である。
（それなのにどうして涙が出てしまうの？）
リリアはひとりきりの夜に自室のバルコニーから夜空を見上げた。
夜空を見るたびにライザスが送ってくれた手紙の内容を思い出す。
【美しい星を眺めているとあなたのことを思い出す】
当たり前だが今のライザスはそのような詩的な言葉を口にしない。
あれは以前のスキルの影響のせいで作られた疑似的なセリフだ。
無視されるよりはるかにマシなのに、どうしようもなく胸が痛いのだ。
リリアの様子をこっそり見ていたマリーは眉根を寄せて「うーん」と小さく唸った。
「果たして本当に旦那さまは冷めてしまったのかしら？」
最初のコメントを投稿しよう！