15、魔鉱石の事件

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「え?」  呆気にとられる男爵の目の前で、ライザスはリリアの肩を掴んで抱き寄せた。  そしてとんでもないことを言い放つ。 「妻とは半径3メートル以上離れていただきたい」 「ちょっと、旦那さま! 物理的にそれは無理ですし、そんなに離れては会話もできませんわ」 「あなたは危機感が足りない。目の前の男爵は男だぞ」  ライザスのその言葉にとっさに反応したのは男爵だ。 「いやいや、さすがに人妻に好意を持ったりしませんよ」 「それはわからないだろう? わが妻は胸を焦がすほど魅力のある美しい女だからな」 「……うん。胸を焦がすのは侯爵さまだけですよ」  男爵は冷静に突っ込んだ。  リリアは羞恥に頬を赤らめながら、少し不思議に思う。 (慈愛のスキルなのに旦那さまがベタベタしてくるのは不具合(エラー)かしら?)  魔力なんて不完全なものだ。特にリリアのような力の弱い魔導士ならなおのこと。  しかし、魔鉱石を手にしていると体中から魔力があふれてくるのはきっと気のせいではないはずだ。 (もしかして魔鉱石の力で私の魔力が一時的に上がって旦那さまのスキルが変化したとか?)  そんなことがあるのかは疑問だが、このライザスの変貌ぶりには疑念を抱く。  リリアがじっと見つめると、ライザスはへらっと笑った。
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