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そんな和やかな時間を過ごしてたときのことだった。
突然男爵のもとへ執事が慌てて飛び込んできたのだ。
「大変です、旦那さま!」
「一体何事です? 客人がいらしているのに」
「申し訳ございません。ですが、魔鉱石採掘場でトラブルがありまして」
「なんだって?」
リリアとライザスも男爵について採掘場へ向かうことにした。
馬車で山奥まで走り、簡易テントが見えたところで全員バタバタと降りていく。
おかしなことにその場はまるで雨上がりのように水たまりがたくさんあった。
来る途中の道は乾いていたというのに。
テントの中には怪我人が複数いて、彼らは荒々しく声を上げていた。
「マクベス家の奴らだ。あいつらが言いがかりをつけてきたんだ」
聞けばマクベス伯爵領の鉱員数人の頭上に土砂が崩れてきて下敷きになったらしい。
それを男爵領の鉱員が故意におこなったのだと向こうが主張している。
「雨も降っていないのに水浸しでさ。おかしいとは思っていた」
「そうだ。そのせいで岩場が崩れてあっちの鉱員たちが怪我を負ったんだ」
それを聞いたリリアがすぐに思いついてぼそりと言った。
「お兄さまだわ」
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