15、魔鉱石の事件

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 するとライザスは冷静に考えを口にした。 「なるほど。相手を怪我させれば賠償問題になるから自分の領地民を犠牲にして事を有利に運ぶつもりか」 「そんなことをして何の得が……」 「領地戦に持ち込むんだ。勝ったほうにこの採掘場の権利が得られるように」 「そんな……」  だが、マクベス伯爵家ならやりかねないとこの場の誰もが思った。 「俺たちは戦う覚悟がありますよ、領主さま」 「そうだそうだ。もう我慢ならねえ。一回ぶっ飛ばしてやりてぇよ。あいつらを」  鉱員たちは勝手に盛り上がっている。  だがその翌日、正式にゼネシス男爵のもとへ宣戦布告状が届いた。  その差出人の名はダン・マクベス。リリアの兄だ。  数人の鉱員に重傷を負わせた男爵領に報復をおこなうというものだった。  あちらはマクベス家の有能な騎士たちを揃え、兄を筆頭に魔導士も多く連れてくるだろう。  それに対して男爵家は魔導士が少ない。  騎士の戦力としてもあちらが圧倒的に勝っている。 「案ずるな。俺がぜんぶ片付けてやる」  ライザスがそう言うと、男爵は苦笑した。 「侯爵さまがそう言われると絶対大丈夫な気がします」
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