15、魔鉱石の事件

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「そうか。リリア、あなたの意思を尊重しよう。思う存分いじめられた兄に報復するがいい。だが、もしも奴がリリアに少しでも傷をつけたら、奴の生死は保障できないと思ってくれ」 「それは仕方がありませんわ。そもそも兄が仕掛けてきたことですから」  ふたりの会話を聞いた男爵がドン引きしている。 「ふたり、似てる……?」  ふたりはそんな男爵の言葉など耳に入っていない。  ライザスはリリアを抱き寄せたまま、穏やかな口調で告げる。 「それを聞いて安心した。これで心置きなくマクベス家を潰しに行ける」 「旦那さま、お気持ちはわかりますがこれは男爵家の問題ですからね。私たちは援軍ですから」 「そうだったな。ついリリアをいじめた敵を地獄へ送りたくなってね」  リリアはクスクス笑った。  ふたりを見た男爵は呆然としている。  クールで不愛想だったライザスは人前で堂々と妻を溺愛する可愛らしさを発揮し、細くてか弱そうなリリアはライザスのような闘争心を燃やす。 「夫婦は似るとはよく言うけど」  お互いに似なくていいところばかり似ている。  男爵がぼそりとそう言ったが、ふたりの耳に届いたかどうかはわからない。
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