16、スキルの不具合でデレデレな夫

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 あれからマクベス伯爵家はすっかりおとなしくなった。  兄のダンは一族から非難され、父に責任を押しつけられ、屋敷に監禁状態らしい。  伯爵家にいた魔導士たちはしきりにリリアに弟子入り志願の手紙を送ってきた。 「いい加減にしてほしいですわ」  リリアはどんどん増えていく手紙を見てため息をつく。  何度も断っているのに彼らは懲りずに送りつけてくるのだ。 「捨てておけ。あなたを無能呼ばわりしたくせに今さら虫のいい話だ」  ライザスがリリアから手紙を取り上げてビリビリに破った。  それを見ると、リリアは不思議と安堵するのだった。  もやもやしていた気持ちをライザスが晴らしてくれる。 「だいたい、こんな一方的な手紙を寄越すとはけしからんな。手紙とは読み手がどう感じるかを一番に考えて書くべきものだ。こうしてほしい、ああしてほしいと自己都合なことばかり並べ立てて、まったく品がない。もっと相手への思いにあふれたものを綴るべきだ」  熱心にそう語るリリアは決して口には出せない。  まさかライザスから送られてきた分厚い手紙が少々めんどくさかったなんて。
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