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王都の宮殿には国中から招待された貴族たちがパーティのために集まった。
リリアがライザスとともに馬車を降りたとたん、周囲はざわついた。
今まで縁談を断り続けていたライザスが妻を連れているのだ。
当然のことながら周囲の注目を浴びることになる。
彼らは次々とライザスに声をかけてきた。
「まあ、ゲルト侯爵がご結婚されたというのは本当だったのですね」
「これはこれは可愛らしいお嬢さんだ。失礼、ご夫人ですな」
貴族たちが興味本位にリリアに近づいてくる。
それをライザスは制止するように、彼らに向かって真顔で言い放った。
「そうだ。妻は世界一可愛くて美しい」
一同ぽかーん。
3秒ほどの沈黙、そして目を丸くしたままライザスを見つめる人々。
すると、ひとりの男がごほんっと咳払いをして言った。
「め、めずらしいですな。侯爵閣下が女性に惚れ込むとは……」
ライザスが鋭い目つきで睨みつけると、男はごにょごにょと濁した。
ライザスは周囲をけん制するようにぐるりと見まわしたあと、急に優しい笑顔になり、リリアの手をとった。
「さあ、行こうか。リリア」
「はい、旦那さま」
リリアも笑顔で答える。
周囲はふたりが宮殿に入っていく様子を見送ったあと、すぐにみんなで集まって騒ぎ出した。
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