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「誰だ? あれは。別人がなりすましているのではないか?」
「ええ。でも、奥さま以外にはいつもの侯爵さまだわ」
「戦場で頭がおかしくなったのだろうか」
「言動に気をつけて。目をつけられてしまうわ」
彼らの話を少し離れた場所で聞いていたのはマクベス伯爵家の姉妹。
リリアの妹たちだ。
「何なの? あれは。リリアお姉さまがゲルト侯爵に愛されているですって? 何かの間違いよ!」
「演技かもしれないわよ。だってお姉さまは【贄嫁】だもの」
ふたりの話を耳にした貴族たちが興味深そうに声をかけてくる。
「今の話は本当か?」
「なんだ、やっぱり演技か。そうだと思った。あの侯爵さまが女に興味を示すはずがない」
「しかも【贄嫁】だろ? お飾りじゃないか」
「お飾りにしてはずいぶんと痩せ細った女だなあ。もっと色気がないと飾っておくこともできないぞ」
周囲が嘲笑に包まれると姉妹はにやりと笑った。
姉妹はこれまでリリアがいかにみすぼらしい人間だったか、さまざまな悪口を吹聴してまわった。
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