3、噂どおりの冷徹な夫と初対面

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 邸宅内も屋敷の外観に負けないほど豪華な造りで、天井が高く広々としていた。  赤い絨毯が敷かれた階段をのぼり、上階へ行くと窓から明るい光が差し込んで甲冑の置物が白銀にきらめいている。  いくつかの部屋の扉を通りすぎ、しばらく進んだところに主人の執務室があった。  アベールが扉をノックして、声をかける。 「旦那さま、マクベス伯爵令嬢をお連れしました」  室内から「入れ」と短い返答があった。  アベールがにこやかに笑みを浮かべ、リリアに「どうぞ中へ」と部屋に入るよう促す。  リリアは緊張しつつも、しっかり背筋を伸ばして入室した。  目に飛び込んできたのは鈍色(グレー)の髪に紫紺の瞳を持つ青年だった。  彼が夫となるライザスなのだろう。  リリアの予想とはまったく違う人物だった。  戦に長けており戦場ばかり駆けまわると聞いていたのでがっちりした体格の大柄な男を想像していたが、実際は線の細いすらりとした体型で切れ長の瞳に美麗な顔立ちだった。  だが不愛想である。  彼はリリアを見てもまったく笑顔を見せない。  腕を組んで、ひとことも言葉を交わさず、説明はすべてアベールにさせた。
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