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「パーティが始まるからそろそろ行きましょう」
さりげなくそう言って、この場から逃げるつもりだった。
すると、背後からビリリリッと音がして、肩と腰あたりのドレスが破れた。
引き裂かれたというほうが正しい。
振り返ると妹たちがハサミを手にしてそれぞれリリアの肩と腰の部分を裂いたのだ。
「ふふふっ……無様なお姉さま」
「やぁだ。高価なドレスが台無しね」
やられた。
ここは刺激しないようにと気をつけたつもりだったが、そうしなくても彼女たちはこれが狙いだったのだろう。
「これじゃパーティに顔を出せないわねえ」
「他のドレスを着ればいいじゃない? でも、地味なドレスばかりね」
ひとりが勝手にクローゼットを開けて確認していた。
たしかに今までずっと地味なドレスばかり着ていた。
実家でそうだったから、侯爵家に嫁いでからもあまり派手なものは好まなかった。
ライザスもそんなリリアの趣好を重んじてくれて、目立つようなドレスは避けてくれた。
今ある着替えはパーティに着ていくには少々地味なものばかりだ。
しかし何よりも、ライザスが特別に手配してくれた新しいドレスが悲惨なことになってしまったのが悲しくてたまらない。
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