3、噂どおりの冷徹な夫と初対面

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「よろしいですか? あなたの役割は旦那さまにスキルを付与なさるだけでございます。それ以上のことをこちらは求めておりませんので」  アベールの口調は優しいが、ライザスの命令事項なのか淡々と事務的に話す。 「普段は旦那さまと顔を合わせることはほとんどないでしょう。寝室も別でございます。ただし、社交の場には同席していただくことになります。まあ、それほど機会はございませんのでご心配には及びません」  アベールがわずかに笑みを浮かべたので、リリアも遠慮がちに笑った。 「食事は一日に3回、そしてティータイムもございます。書庫は自由に出入りしていただいて大丈夫です。庭園の散歩もご自由に。湯浴みのご用意もいたします。睡眠はしっかりとっていただいて結構です」  実家よりもはるかに贅沢な暮らしだ。  リリアは驚いて目を丸くする。 「ご入用の物がございましたら衣装屋でも宝石商でもすぐに呼びつけますので、その都度ご用命くださいませ」  リリアは冗談ではないかとアベールの言葉を疑った。  ひと通り説明が終わったあとも、リリアは呆気にとられて黙ってしまった。  しばらくの沈黙のあと、アベールが首をかしげた。
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