19、侯爵は真実の愛で妻を愛でたい

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「今、何と言った?」  その日、ライザスは険しい表情で目の前のローズに向かって訊ねた。  ローズは今日は青のドレスで、青の扇を口もとに当てて笑みを浮かべている。 「ですから、あなたはスキルなんてものは身についていないのよ」  その言葉に執事のアベールは驚き、侍女のマリーは真顔だった。  リリアは呆気にとられて絶句している。 「なぜ、あなたにそんなことがわかる?」 「だって、あたくし聞いたのだもの。神官さまたちが話しているところを。あなたのスキルはたしかに上書きされたそうよ。でも魔導士が言うにはスキルは【無効】だったのですって。つまり、前回のスキルは消えて今回は無効だから、あなたは完全に元のライザスだったということ」  スキルが身についていないということは、ライザスのこれまでのリリアに対する態度はすべて素でやっていたことになる。  リリアは猛烈に恥ずかしくなり、真っ赤な顔でうつむいた。  ライザスも頬を赤くしているが、苛立ちを見せながらアベールに命じた。 「すぐに神官と魔導士を呼べ!」
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