3、噂どおりの冷徹な夫と初対面

5/13

993人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「どうかなさいましたか?」 「ええ、なんて好条件なお仕事……いいえ、好待遇な扱いで驚いております」 「ゲルト侯爵家の奥さまですから当然のことでございます」 「たったひとつの役割だけで、こんなにしていただいてもよろしいのですか?」  リリアがおずおずと訊ねると、今度はライザス本人が答えた。 「その代わり、必ず俺の望むスキルを付与すること。それさえできれば問題ない」 「……はい」  冷めた顔のライザスをリリアは遠慮がちに見つめて言った。 「あの、スキル付与のことですが、私の意思ではどうにもなりません。侯爵さまの素質や本能的なものも関係してくるので」  ライザスが眉根を寄せて睨むようにリリアを見つめる。  その目に少し恐れを感じてリリアはとっさに目をそらした。 「話は以上だ。俺はこれから出かける。アベール、彼女の部屋へ案内してやれ」 「承知いたしました」  ライザスはリリアと目を合わせることもなく、上着を羽織って、さっさと執務室を出ていってしまった。 (本当に私にはまったく興味がないのね。まあ、いいけど)
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

993人が本棚に入れています
本棚に追加