3、噂どおりの冷徹な夫と初対面

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 それでも、実家であるマクベス伯爵家とは決定的な違いがあった。  あの家にいた頃は両親や兄たちはその日の気分で使用人に八つ当たりをしていたから。  さらに使用人たちは憂さ晴らしをするために、自分たちより弱い者たちをいじめていたのだ。  そのいじめの対象がリリアに向けられていたこともある。  リリア付きの使用人たちは自分が被害に遭わないようにリリアと距離を置いて接していたくらいだ。 (あの家よりマシだわ)  リリアはプディングとフルーツをすべて平らげて食事を終了した。  そして、料理長に向かって笑顔で言った。 「とても美味しかったわ。ありがとう」  それを聞いた料理長は驚き、強張っていた表情が緩んで笑顔になった。  緊張の糸が切れたような様子で彼は深々とリリアに頭を下げた。 「ありがたきお言葉感謝いたします」  料理長のその言葉で使用人たちも一気に緊張が緩んだ様子でそれぞれ笑みを浮かべた。  ライザスがいなくなったことで冷え冷えとしていた空気が穏やかになる。  リリアがにこっと笑顔を向けると、使用人たちは戸惑いながらも笑顔を返した。
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