3、噂どおりの冷徹な夫と初対面

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 マリーは紅茶を淹れながら面白そうに笑って言う。 「残念ですわ。旦那さまはあんな冷たいお方ですが、抱かれたいと思う令嬢は山ほどいらっしゃるのですよ」 「だ、だ、だ……!」  猛烈に顔が熱くなり言葉もまともに発せなくなるリリアを見て、マリーはぶふっと吹き出した。 「リリアさまは社交の場はあまりご経験なさっていないのですか?」 「ずっと屋敷にひきこもっていたから、ほとんどパーティに出席させてもらえなかったの」  魔導士としての修行があるという理由で父はリリアを外に出そうとしなかった。  その理由はやはり妾の子であるからだ。  特に【贄嫁】になってからはそれが顕著だった。 【贄嫁】はいわば奴隷のようなものだからだ。  形だけは貴族の妻となるが、主人のスキル付与に加えて跡継ぎを産む。  これが与えられた役割であり、そこに主人からの愛情などない。
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