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やがて光が一点に集まり、魔導士が手に持つ特殊な紙に文字が印字された。
スキルの付与が完了したということだ。
魔導士は安堵したようにふたりに告げる。
「これにてスキル付与は完了いたし……」
彼は手もとの紙に目を落とした瞬間、言葉に詰まった。
不審に思った神官が覗き込むが、そこに書かれてあるのは魔術文字なので読めない。
「どうされましたか?」
「い、いやあ……」
魔導士は急に焦り出した。
「一体何が書いてあるんですか? スキル付与は成功したのですか?」
神官は眉をひそめながら訊ねるも、魔導士は乾いた笑いを洩らすだけだ。その額には汗が滲み出ている。
様子がおかしいとなり、儀式を見守っていた者たちはざわついた。
魔導士がなかなかスキルを口にしないので、痺れを切らしたライザスはその紙を取り上げた。
そして彼は怪訝な表情で魔導士を問いただす。
「何が書いてある? 読み上げろ」
「え、ええっと……」
「もういい。あなたが読んでくれ。魔導士なら読めるだろう?」
リリアはいきなりライザスに紙を渡されて目にした文字に、驚愕のあまり固まった。
(え? どうして……?)
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