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リリアまで絶句してしまったから、ライザスは苛立ちを顔に出して詰め寄った。
「そこに何が書いてある? 早く読み上げるんだ」
リリアはおずおずと声に出して言った。
「侯爵さまに付与されたスキルは【溺愛】です」
時間が止まったような静けさが訪れる。
魔導士は青ざめた表情をしており、神官は呆気にとられ、リリアは不安げにライザスを見つめる。
そして、当の本人は眉をひそめ、表情を歪めた。
「何だそのスキルは? ふざけているのか」
「いいえ、ふざけてなどおりません。本当にそのように書いてあるのです」
「あなたは一体何をしたんだ?」
「な、何も……」
とリリアは言いかけて、はたと思い直す。
(もしかして私が余計なことを考えてしまったから?)
何が影響したのかはわからない。
そもそも【溺愛】などというライザスにはもっとも縁のなさそうなスキルが、なぜ付与されてしまったのか。
ライザスの表情は怒りに満ちている。
彼は何も言えずに黙るリリアを睨みつけ、魔導士に訊ねた。
「スキルの書き換えは出来るのか?」
「は、はい。しかし今夜を入れずに3回満月を見送ってからになります。つまり……」
「4ヵ月後か!」
「……そうなります」
ライザスは「くそっ」と吐き捨てる。
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