5、スキル【溺愛】を身につけた夫の苦悩

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 衝動的に彼女の前に出ていきたかった。  そして周囲の目もはばからず、彼女を抱きしめたいと思った。  そのまま自室に連れ戻ってもいいだろう。  何も問題はない。  なぜなら、自分たちは夫婦なのだから。 (やめろ……そうじゃない。俺はそんなことを望んではいない……!)  欲望は次々とあふれてくる。  彼はそれを打ち消すように必死に理性を奮い立たせた。  だが、それも無理だった。  ふたたびリリアに目をやると無性に触りたい衝動にかられるのだ。 (このままではただの変態になってしまう)  ライザスは自制心を保つため、あえてリリアから目をそらした。  そして本棚に寄りかかるようにして床に座り込み、何度か深呼吸をする。 (これはあの妙なスキルのせいだろう。スキルを書き換えれば収まるはずだ。どうせすぐにここを出る。あの娘と離れればこの感情は薄れるに違いない)  しばらく床に座り込んだまま自分を落ち着かせていると、ふいに声をかけられてしまった。 「旦那さま、大丈夫ですか? お加減でも悪いのでしょうか?」  見上げるとリリアがこちらを覗き込んでいて、ライザスは心臓が飛び出すほど驚愕した。
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