5、スキル【溺愛】を身につけた夫の苦悩

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 なんとか顔には出していないが、その胸中は大混乱である。 「いや、少し疲れているだけだ。俺にかまわなくていい」  冷たくそう言ってしまったが、すぐに後悔する。 (違う、そうじゃない! そんなことが言いたいのではない!)  ちらりと目をやるとリリアはひどく落ち込んでいるようだった。 「申し訳ございません。出過ぎた真似を」  リリアが神妙な面持ちで頭を下げる。  ライザスはどうしようもない罪悪感でいっぱいになった。  しかし、あくまで冷静に告げる。 「あなたが謝ることはない。俺がどうなろうとあなたには関係のないことだ」  さらに口調が冷たくなり、リリアはますます気まずそうな顔をした。 (何言ってんだ俺! そうじゃないだろ! 素直にありがとうと言えよ! 心配してくれたのかありがとうと言えよ!)  リリアがきゅるんとした瞳で見つめてくる(ライザスにはこう見える)ので、これ以上顔を合わせるのに耐えられなくなった。  ライザスはくるりと背中を向けてリリアに告げる。 「用があるので失礼する」  そう言ってさっさと書庫を出ていった。
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