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それを見ていた周囲の騎士たちはひそひそ話した。
「一体どうされたんだ? 次の遠征のための訓練にしては度が過ぎる」
「ああ。ライザスさまはいつも遠征前は体力を温存するために訓練はほどほどにされるはずだ」
「何か嫌なことでもあったんじゃないか?」
そんな中、訓練場にあまりにも場違いな人物たちが訪れた。
柵の向こうにいるのはリリアとその侍女マリーである。
それに気づいた騎士たちはざわついた。
「奥さまだ。このようなところになぜ?」
「ご見学だろうか」
リリアの姿を目にしたライザスは無言で硬直し、その手からするりと剣が滑り落ちた。
完全に固まっているライザスを見て騎士たちはさらにざわついた。
「え? 何、もしかして……」
次の瞬間、ライザスは真っ赤な顔でその場から逃げてしまった。
「思春期かよ!!」
彼らの突っ込みなどライザスの耳には届かなかった。
建物内に逃げ込んだ彼は高鳴る鼓動を必死に抑えようと何度か深呼吸をする。
(なぜ、妻がこんなところにいるんだ? いや、そんなことよりも、妻が可愛すぎて死ねる)
どこにいてもリリアは美しく可愛らしい。
彼女を目にするたびに、ライザスは激しく湧き上がる衝動を抑えるのに必死だった。
(これ以上、妻と会ってはならない。だが、妻に会いたい!)
「くそっ!!!」
ライザスは自分の顔を拳で殴りつけた。
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